この記事のゴール
- 初心者が迷わず30分で基本ダッシュボードを完成させる
- 明日から運用できる設計原則とチェックリストを持ち帰る
- つまずきやすい権限・指標・日付の落とし穴を回避する
Looker Studioとは?できること・向いていること
Looker Studio は、複数データを無料で可視化・共有できるGoogleのBIツール。
- 向いていること:マーケ指標のモニタリング、KPI共有、週次レポート代替
- サッとできること:GA4の可視化、Google広告の成果集計、スプレッドシートの集計、埋め込み共有
- 気をつけること:指標の定義ズレ、権限の継承、データ量が多い時の動作の重さ
まずは“全部載せ”ではなく目的別ミニボードから。KPIが回り始めてから拡張しましょう。
はじめてのセットアップ(無料でOK)
- Googleアカウントでログイン
- 新規レポート → データを追加
- とりあえずは GA4 か Googleスプレッドシートで開始
- 社内共有はリンク共有(閲覧)から。編集者は最小限に。
命名規則(おすすめ)[用途]-[部署/プロジェクト]-[更新頻度]-[ver]
例:KPI-EC-Weekly-v1.0
30分レシピ:GA4ダッシュボードを作る
目的:集客→行動→成果の流れを、1ページで把握できる“朝会用”ダッシュボードを作る
Step 1. データ接続(5分)
- データソース:Googleアナリティクス 4(GA4)
- デフォルト日付範囲:過去28日(比較:前期間)
Step 2. レイアウト(5分)
- ページ幅:ワイド
- 行構成:
- 行1:KPIカード(ユーザー数 / セッション / CV / CVR / 売上)
- 行2:可視化(曜日×時間のヒートマップ、集客チャネル円/棒)
- 行3:詳細テーブル(参照元/メディア別、LP別)
Step 3. ウィジェット配置(15分)
- スコアカード×5:
- ユーザー、セッション、合計収益(EC)、コンバージョン(主要イベント)、CVR(計算式後述)
- ヒートマップ:ディメンション=曜日 / 時間、指標=セッション
- 棒グラフ:ディメンション=デフォルトチャネルグループ、指標=セッション・CV
- テーブル:ディメンション=参照元/メディア、指標=セッション・CV・CVR・収益
- ソート:CV降順
- 条件付き書式:CVR > 平均で強調
Step 4. コントロール(5分)
- 日付範囲コントロール(右上固定)
- ディメンションフィルタ(デバイスカテゴリ、国/地域)
ここまでで“毎朝見るべき”可視化が完成。まずは1ページで回してから増築しましょう。
広告・表計算をつなぐ:実務で効くデータ接続3選
- Google 広告:キャンペーン×成果(CV/売上)をGA4と日付で整合確認
- Search Console:クエリ × ページでSEOの拾い上げ。LP別の“検索意図”を会議に持ち込める
- スプレッドシート:
- 予算表(目標CPA/CAC、在庫、粗利率)
- オフラインCV(コール/来店/受注確定)
- 運用メモ(施策ログ)を同じページに埋め込むと意思決定が速くなる
ヒント:Joinキーは「日付」+「キャンペーン名」など。命名規則を揃えるとデータブレンドが安定します。
“使える”レポートに変える5つの設計原則
- 意思決定ファースト:グラフは“見ると動けるか”で採用
- KGI→KPI→指標:目的→手段の順でページ構成
- 1画面1物語:スクロールを減らす、結論→根拠→詳細
- 定義を明記:CVの定義・集計単位・帰属期間を本文か注釈に記載
- 運用を設計:更新頻度、担当、アーカイブ方法を最初に決める
計算フィールドの常備レシピ(コピペ可)
※指標名はデータソースに合わせて調整してください
- CVR(%)
(Conversions / Sessions) * 100
- CTR(%)(広告データソース)
(Clicks / Impressions) * 100
- 平均注文額(AOV)
Revenue / Transactions
- CPA(獲得単価)
Cost / Conversions
- ROAS(%)
(Revenue / Cost) * 100
- 直帰率(GA4相当のエンゲージしなかった割合の代替)
1 - (Engaged sessions / Sessions)
- 新規率
New users / Users
命名のコツ:
[KPI]_[単位]
(例:ROAS_pct
)。人が増えても迷わない。
フィルタ・コントロールで“誰でも触れる”化
- 日付:
過去28日 | 過去7日 | 昨年同週
のプリセットを保存 - デバイス:PC/モバイル/タブレットでレイアウト差を素早く確認
- チャネル:Organic / Paid Search / Paid Social / Referral をワンタップ比較
- 検索(テキスト):キャンペーン名・LP名の部分一致で担当者が自走
“閲覧者が自分で切れる”UIをつけるほど、運用負荷が下がり意思決定が早くなる。
よくあるつまずき(権限・指標の不一致・日付)
- 見えない/壊れる:
- スプレッドシートの共有が“リンク閲覧可”になっていない
- データソースの所有者が退職/権限変更
- 指標のズレ:
- GA4のコンバージョン定義と広告の“CV”が別物
- 帰属(アトリビューション期間/モデル)の前提が異なる
- 日付が合わない:
- タイムゾーンの違い(GA4はプロパティTZ、広告はアカウントTZ)
- “当日”を含める/含めないで数値がブレる → 締めルールを明記
チェックフレーズ(レポート下部に明記)
- 集計範囲:
yyyy-mm-dd – yyyy-mm-dd
- タイムゾーン:
Asia/Tokyo
- CV定義:
purchase / generate_lead …
- 帰属:
データ主導 / 7日クリック、1日ビュー
など
運用:共有・権限・バージョン管理・パフォーマンス
- 共有:編集権限は最小限。レビューは閲覧+コメントで回す
- 権限:データソースをオーナー横断で作らない(組織アカウントで統一)
- バージョン管理:
v1.0
から小刻みに。大規模改修はコピーで別ID - パフォーマンス:
- グラフ数を減らす、抽出データや集計テーブルの活用
- 重いテーブルはページを分割、必要ならSheetsで前集計
テンプレ構成例:経営ダッシュボード/広告運用/コンテンツSEO
1) 経営ダッシュボード(週次・1ページ)
- KGI:売上/粗利/在庫回転
- KPI:新規CV・LTV見込み・広告効率
- 構成:KPIカード → チャネル別ファネル → 商品別売上パレート → 施策ログ埋め込み
2) 広告運用(デイリー・2ページ)
- P1:配信サマリ(費用・CV・CPA・ROAS、チャネル/キャンペーン別)
- P2:クリエイティブ分析(広告名×CTR×CVR、検索語句/クエリ、LP別CVR)
3) コンテンツSEO(月次・2ページ)
- P1:クエリ×ページ(掲載順位・CTR・クリック)
- P2:記事別トレンド(公開日×成長、内部リンク網羅率、更新履歴)
FAQ
Q1. 無料でどこまで使えますか?
A. 小規模〜中規模のモニタリングは十分可能。まずは無料で構築し、運用の壁(権限・SLA・大規模)に当たってから有料化や体制整備を検討。
Q2. GA4だけでも良いですか?
A. まずはOK。ただし広告費や粗利が見えないと意思決定は鈍るため、早めに広告/表計算を併用してROAS/利益まで可視化を。
Q3. 数値がツール間で合いません
A. 定義(CV/期間/タイムゾーン/モデル)を注釈に固定。比較する時は同じ粒度で合わせるのが鉄則。
Q4. 動作が重い/開かない
A. グラフ削減、抽出データの活用、前集計(Sheets/Pivot)で負荷を軽減。1ページ1目的に。
Q5. 社外共有は安全ですか?
A. 共有リンクは閲覧限定+データソースの公開範囲を確認。個人情報/機微データは匿名化/集計が原則。
Q6. Excelでも使えますか?
A. 直接は×。Googleスプレッドシートに取り込むか、CSVでアップロード(定期反映はApps Script等で自動化)を。
Q7. ダッシュボードが増えて混乱
A. 命名規則と用途マトリクスで整理。廃版ルール(最終閲覧日90日超でアーカイブ等)を。
付録:作成チェックリスト(コピー用)
- 目的を1行で言える(誰が、いつ、何を決めるため?)
- KPIが5つ以内
- 定義・期間・TZ・帰属が明記
- フィルタ(日時/デバイス/チャネル)を配置
- 1ページ完結で結論→根拠→詳細
- 共有権限は閲覧中心、編集は最小
- 週次の運用オーナーが決まっている