Amazonで初めて広告を出すときに迷いがちなポイントは、どの広告から始めるか、どう設計すればムダ打ちを減らせるか、そして何を指標に改善すべきかの三つです。本ガイドは、上位記事の構成を踏まえつつ、実務でそのまま使える設計テンプレート、初期設定の最適解、七日間の運用シナリオ、毎週三十分の改善ルーチンまで一気通貫でまとめました。今日スタートしても迷わないよう、設定名や入札の目安まで具体化しています。
1. Amazon広告の全体像と最初に選ぶべきメニュー
Amazonの主要広告は次の三種です。初心者はスポンサープロダクトから始めます。
・スポンサープロダクト広告(SP):商品詳細ページや検索結果に表示。最優先で着手。
・スポンサーブランド広告(SB):検索結果上部のブランド枠。ブランド登録済みで代表商品がそろってから。
・スポンサーディスプレイ広告(SD):閲覧履歴や競合商品に配信。再アプローチや攻めの席取りに有効。
最初の一週間は SP のみで十分です。売れる面が安定してから SB と SD を足します。
2. 出稿前チェックリスト(商品ページを整える)
広告パフォーマンスの半分は商品ページで決まります。広告の前に必ず点検します。
・タイトル:主要キーワードを先頭寄せ、文字数は検索面で切れない長さに調整
・画像:第一画像は背景白。二〜七枚で使用シーン、サイズ感、差別化要素を明確化
・要点(要約):ベネフィットが一目で伝わる箇条文
・商品説明:素材、サイズ、使い方、注意点、保証の有無を明確に
・レビュー:初動はカスタマーQ&A整備、サポート導線の明示で悪化を予防
・在庫と価格:在庫切れは配信停止に直結。価格は競合と相対比較で
3. 初期アカウント設計と命名規則(コピペで使える)
複数商品を運用しても迷子にならない設計を最初に決めます。
命名規則
・ポートフォリオ名:PF_カテゴリ_ブランド_目的(例 PF_キッチン_自社_獲得)
・キャンペーン名:CP_商品名_ASIN_目的_ターゲティング_日付(例 CP_電動歯ブラシ_B07XXXX_獲得_AUTO_202509)
・広告グループ名:AG_マッチタイプまたは商品束(例 AG_EXACT、AG_PRODUCT)
・キーワード命名:KW_実語句_マッチタイプ(例 KW_電動歯ブラシ_EXACT)
・否定語リスト:NEG_ブランド汎用、NEG_競合無関連
初期の面構え(SPのみ)
・オートキャンペーン:学習用に一つ
・マニュアルキャンペーン:
− キーワード一致三分割(Exact、Phrase、Broad)
− 商品ターゲティング(競合ASIN、自社クロスセル)
4. 最短で学習を進める初期配信プラン(七日間シナリオ)
日一時間以内で回せる現実的なプログラムです。
・一日目:オート一件、手動三件(Exact、Phrase、Broad)と商品ターゲティング一件を作成。日予算は各千円程度から開始。
・二〜三日目:サーチタームレポートで明らかな無関連語を否定登録。クリックが十を超えても購入ゼロの語は入札を二割下げ。
・四〜五日目:オートで獲得した良語句を手動Exactへ昇格。入札はオートより二割高く設定。
・六日目:商品ターゲティングの上位表示割合を確認。想起されやすい競合ASINを二十件追加。
・七日目:ACoSとTACoSを確認。黒字域なら日予算を二割増。未達なら入札と否定語を再調整。
5. 指標の見方としきい値
・ACoS(広告費÷広告売上)×一〇〇
・ROAS(広告売上÷広告費)
・TACoS(広告費÷全売上)×一〇〇
・CTR(クリック率)
・CVR(転換率)
・CPC(クリック単価)
目安
・ACoS:利益率以内を目標。粗利二五パーセントなら ACoS 二五パーセント以下を基本線
・CTR:検索結果で一パーセント以上、表示箇所により変動
・CVR:一パーセント台は要改善。三パーセント以上を狙う
・TACoS:上昇は広告依存のサイン、下降はオーガニックが育っているサイン
6. 週次三十分の改善ルーチン(手順書)
一、パフォーマンス確認(五分)
・キャンペーン別 ACoS、売上、支出を一覧
・先週比で費用対効果が悪化したものを印
二、収穫(十分)
・サーチタームレポートから注文一以上の語を抽出し Exact へ昇格
・クリック十以上注文ゼロの語は入札を二〜三割下げ、必要なら否定語へ
三、入札最適化(十分)
・目標 ACoS より良い語句は一〜二割入札増で機会を広げる
・悪い語句は一〜三割入札減で出費を抑制
・上部掲載の比率が低いが CVR が高い語句は上部倍率調整を上げる
四、在庫と価格(五分)
・在庫切れ予測は即警戒。価格変更時は前後の指標を比較
7. 予算と入札の考え方(目安表)
フェーズ | 日予算の目安 | 入札の初期値 | 動的入札 | 掲載位置調整の目安 |
---|---|---|---|---|
学習開始 | 各千円前後 | カテゴリ平均CPC相当 | 下げるのみ | 上部零〜二〇パーセント |
反応確認 | 売れ始めたら二割増 | 反応の良い語を一割増 | 上下にする | 上部二〇〜五〇パーセント |
拡大 | 黒字域で二〜三割増 | 上位語は段階的に増額 | 上下にする | 上部五〇〜一〇〇パーセント |
※カテゴリ平均CPCは運用画面の推奨入札を参考にしつつ、いきなり高すぎる設定は避けます。
8. キーワードと否定語の掘り方(オートから手動へ)
・オートで広く学習し、注文のついた検索語を手動Exactへ移植
・Phrase と Broad は面拡張と連想語の発見に限定
・否定語は三層で管理
− 口癖否定(無料、中古、修理など)
− 商品特性否定(サイズ不一致、型番違い)
− ライフサイクル否定(在庫切れ品、旧型の語)
9. クリエイティブと商品ターゲティングのコツ
・商品画像は第一印象で差が出るため、使い方やサイズ比較の画像を二〜三枚用意
・SB を始める際はブランドストアの導線を整理し、代表三商品を構成
・SD は自社ベストセラーの再アプローチと、競合の類似ASINに絞って開始
・商品ターゲティングは
− 価格差で勝てる競合ASIN
− レビュー数が多いが弱点のある競合
− 自社内クロスセルの相性が良いASIN
を優先
10. つまずきやすい落とし穴と回避策
・在庫切れのまま配信継続
− 在庫アラートを週次ルーチンに組み込む
・日予算の頭打ちで学習停滞
− 黒字キャンペーンは早めに増額
・オート任せで収穫をしない
− 週次で Exact へ昇格と否定登録を徹底
・商品ページの説得力不足
− レビュー、Q&A、使用画像で不安を先回り解消
11. よくある質問
Q. まず一商品だけでも良いか
A. はい。一商品で SP を四構成(オート、Exact、Phrase、Broad)に分け、商品ターゲティングを足せば学習は十分進みます。
Q. 何日で成果が出るか
A. 目安は二週間。七日目で方向性を見直し、十四日目で勝ち面に集中します。
Q. どの指標を最優先に見るか
A. 粗利内で回るかの ACoS と、店舗全体の健全性を見る TACoS の二軸です。
12. 用語ミニ辞典
・ACoS:広告費÷広告売上。低いほど効率的。
・ROAS:広告売上÷広告費。高いほど効率的。
・TACoS:広告費÷全売上。オーガニックの伸長を見る。
・一致種別:Exact(完全一致)、Phrase(語句一致)、Broad(部分一致)
・否定語:配信対象から除外する検索語
・商品ターゲティング:特定ASINやカテゴリを狙う配信
・動的入札:入札を自動で上下させる設定
そのまま使える初期テンプレート
キャンペーン構成(SP)
・オート
− 日予算 千円、動的入札は下げるのみ、入札は推奨の中間値
・マニュアル Exact
− 主力語五〜一〇語、入札はオートより二割高、上部掲載二〇〜五〇パーセント
・マニュアル Phrase
− 連想語一〇〜二〇語、入札は Exact より二割低
・マニュアル Broad
− 面拡張用に五〜一〇語、入札は Phrase より一割低
・商品ターゲティング
− 競合ASIN二〇、自社ASIN一〇、入札はカテゴリ平均CPCの八割から
週次チェック表
項目 | 確認内容 | 対応 |
---|---|---|
ACoS | 利益率以内か | 入札増減、否定語、予算調整 |
CTR | 一パーセント未満は要改善 | 画像、タイトル、掲載面 |
CVR | 一パーセント台は要改善 | ページ改善、価格見直し |
収穫 | 注文のついた語をExactへ | キャンペーン間で移植 |
否定 | 無関連語の登録 | キャンペーン単位で適用 |
在庫 | 欠品予兆の有無 | 仕入れと広告強度を同期 |
このガイドの手順どおりに、スポンサープロダクトの四構成と商品ターゲティングを立ち上げ、七日間シナリオと週次ルーチンを回せば、初心者でもムダを抑えながら学習を進められます。黒字域に入った面から順に日予算を増やし、SB と SD を段階的に追加していきましょう。