「とりあえずデフォルト」で設定したコンバージョンが、入札の判断を誤らせていませんか?
本記事は「コンバージョン値 目標値 設定 仕方」で上位表示される構成を踏まえつつ、EC/リード獲得どちらにも使える“利益直結”の設計手順を、数式・チェックリストまで含めて最短ルートでまとめました。読み終わる頃には、GA4とGoogle広告で価値ベース入札(tROAS/最大化)を正しく動かすための土台が揃います。
1. 用語整理:何が違う?(最初の3分でズレをなくす)
- コンバージョン(CV):達成イベント(購入、申込、電話など)。
- コンバージョン値(CV値):そのCVがビジネスにもたらす金銭的価値(売上・期待粗利・LTVの一部など)。
- 目標値:入札が目指すKPIの水準(例:tROAS 300%、目標CPA ¥10,000 など)。
- どれを使う?
- EC:売上が計測できるならtROASが基本。
- リード:期待粗利ベースの“重み付けCV値”を設定し、tCPAまたはtROASを選択(後述)。
- マイクロCV(例:カート投入、LPスクロール)は小額の値を与え、主目的(購入/本申込)の価値を100倍以上にして優先度を明確化。
2. CV値の考え方:粗利とLTVから逆算する(売上ではなく“お金が残る”値へ)
2-1. ECの基本式
- 平均注文額(AOV)
- 粗利率(= 1 − 原価率)
- 控除:返品率、クーポン・ポイント比率、決済手数料率、送料補助 など
- LTV倍率:初回購入後の将来購入分(割引現在価値でOK)
- 安全係数:0.6〜0.8(季節変動・見積り誤差の吸収)
CV値(1注文) ≒ AOV × 粗利率 × (1−各種控除) × LTV倍率 × 安全係数
例(EC):
AOV ¥5,500、粗利率45%、返品5%、決済手数料3.6%、LTV倍率1.8、安全係数0.7
→ CV値 ≒ 5,500 × 0.45 × 0.95 × 0.964 × 1.8 × 0.7 ≒ ¥2,856
このCV値を基準に価値最大化入札を動かすと、目標ROASはおおよそ 190〜200%が妥当レンジになります(売上5,500円 ÷ 許容広告費2,856円 ≒ 1.93)。
2-2. リード獲得の基本式
- 平均粗利(1成約) × LTV倍率
- 成約率(フォーム送信→商談→成約の合算) × (1−キャンセル率)
- CV値(1フォーム送信)= 期待粗利 × 成約確率
例(リード):
1成約あたり粗利¥200,000、LTV1.5、フォーム→有効商談50%、商談→成約20%、キャンセル10%
期待粗利 = 200,000 × 1.5 = 300,000
成約確率 = 0.5 × 0.2 × 0.9 = 0.09
→ CV値(1送信) = 300,000 × 0.09 = ¥27,000
目標CPAは「広告費率」の設計で決定(例:広告費率40% ⇒ 27,000 × 0.4 = ¥10,800)。
3. 目標値(tROAS/tCPA)の決め方:シナリオ別の基準
事業タイプ | 推奨KPI | 目標値の出し方 |
---|---|---|
EC(売上が正確に計測可) | tROAS | 目標ROAS = 100 × 売上 ÷ 許容広告費 ≒ 100 ÷ 許容広告費率 (例:許容広告費率35% ⇒ 目標ROAS ≧ 286%) |
EC(粗利ベース運用) | tROAS | CV値を粗利ベースにして、目標ROASは100%前後(粗利=広告費の1倍以上)から開始し、学習後に引き上げ |
リード(売上未連携) | tCPA | 目標CPA = CV値 × 広告費率 (例:広告費率40%)/tROASを使う場合はCV値の一貫性が前提 |
マルチ商品 | tROAS+値ルール | 高粗利カテゴリに値ルール(デバイス・地域・オーディエンス加点)で重み付け |
スタート時のコツ:
・過度に厳しい目標は学習を壊します。最初は緩め→安定→引き上げの順で。
・変動期(セール・季節)は入札の季節性調整を活用。
4. 実装ステップ(GA4 → Google広告)※最短ルート
4-1. GA4側(イベントと値の送信)
- 主要CVを1〜3個に厳選(EC=購入、リード=フォーム送信/電話など)。
- CVイベントにvalue(金額)と currency(JPY など)を必ず送る。
- EC:商品価格の合計(送料・税の扱いは社内で統一)。
- リード:前章の期待粗利ベースCV値を固定値で送る(スコアリング段階が複数ある場合は段階別に値を差別化)。
- GA4で該当イベントをコンバージョンに指定。
- 重複計測防止:同一成果が複数イベントで二重カウントにならない設計。
- アトリビューション:データドリブンを推奨(変更の影響は要周知)。
4-2. Google広告側(入札と連携)
- 管理画面 → コンバージョン → GA4からインポート。
- 主要CVのみ「コンバージョンに含める」=ON、補助的CVはOFF(「すべてのコンバージョン」列で参照)。
- 値ルール:高価値セグメント(例:既存会員、高単価カテゴリ、特定地域・デバイス)に+10〜50%加点。
- 入札戦略:
- EC:最大化コンバージョン値+tROAS(学習期はしきい値や予算を急に絞らない)。
- リード:tCPA(CV値を正しく与えた上で)→ 将来はtROASへ移行も可。
- 除外設定:社内IP、求人流入、重複フォームなどは早めに除外。
5. ケース別・具体例(計算手順つき)
5-1. EC例:雑貨EC
- AOV ¥5,500/粗利率45%/返品5%/決済3.6%/LTV1.8/安全係数0.7
→ CV値 ≒ ¥2,856 - 目標ROAS(売上基準):5,500 ÷ 2,856 ≒ 193%
- 運用:学習期は180〜200%で安定化→在庫余力や上限利益率に合わせて210〜250%まで引上げ。
5-2. リード例:BtoBツール
- 1成約粗利¥200,000/LTV1.5/フォーム→商談50%/商談→成約20%/キャンセル10%
→ CV値(1送信)= ¥27,000 - 目標CPA:広告費率40% ⇒ ¥10,800
- 運用:初期はtCPA¥12,000で学習→品質上昇後に¥10,800へ段階的に引締め。
6. 更新ルール:いつ見直す?(“速すぎず遅すぎず”がコツ)
- 学習安定後の2〜4週間で初回見直し。
- 季節イベント前(セール、繁忙期)に値ルールを調整。
- LTVの見直し:30/60/90日でコホート粗利を再計測し、CV値・目標値を更新。
- 異常時対応:在庫逼迫や連絡不能増などは、一時的に目標を緩め、トラッキングや業務側のボトルネックを先に解決。
7. “あるある”失敗と回避策チェックリスト
- CV重複(購入+サンクス到達を二重計測)を潰した
- value/currency未送信や通貨ミスマッチを解消した
- 主要CVだけ「コンバージョンに含める」にした(補助CVは除外)
- Auto-tagging(gclid等)とオフラインCVインポート(リード進捗)が整備済み
- アトリビューション変更の社内周知(数値が変わる理由を共有)
- 値ルールで高粗利・高LTVセグメントを加点
- 学習破壊を避ける(急激な目標厳格化・予算削減はしない)
- 品質担保(スパム申込、社内IP、求人流入を除外)
- tROAS×粗利ベースの併用時は目標100%前後→引上げの順序
- マイクロCVの値はメインCVの1/100以下に抑えた
8. そのまま使える“数式テンプレ”
EC(粗利LTVベースCV値)
CV値 = AOV × 粗利率 × (1−返品率) × (1−割引率) × (1−決済手数料率) × LTV倍率 × 安全係数
目標ROAS(%) ≒ 100 × AOV ÷ CV値
リード(1フォーム送信あたりCV値)
CV値 = (1成約粗利 × LTV倍率) × (有効商談化率 × 成約率 × (1−キャンセル率))
目標CPA = CV値 × 目標広告費率(例:0.3〜0.5)
補助指標
許容広告費率 ≒ 1 ÷ 目標ROAS
ブレークイーブンROAS(%) = 100 × 売上 ÷ 許容広告費(または 100 ÷ 許容広告費率)
9. 導入〜運用のミニ手順まとめ(保存版)
- 主要CVを1〜3に絞る → 2) CV値を“粗利×LTVベース”で定義 → 3) GA4で value/currency を送信 →
- Google広告へインポートし主要CVのみ含める → 5) 値ルールで高価値セグメントに加点 →
- tROAS/tCPAは緩めに開始 → 7) 2〜4週で目標を微調整 → 8) 30/60/90日でLTV・CV値を更新。
まとめ
「CV値=売上」ではなく、“期待粗利×LTV”に安全係数を掛けた“事業が残る値”を用いること。
そのうえで主要CVだけを最適化対象にし、値ルールや季節性調整でビジネスの実態に近づければ、価値最大化入札は“正しい方向”へ学習します。今日から設定を見直し、利益に直結するGA4×Google広告へ。