手探りで始めてみたけど設定が不安、情報が古い・断片的で腑に落ちない——そんな人向けに、「いまの実務で本当に使う」考え方と手順を一本化しました。検索(リスティング)・ディスプレイ・ファインド(Discover/Gmail/YouTube面)を中心に、初期セットアップ→運用改善→計測とLP改善までを通しで解説します。
1. まず前提:勝てる全体像
- 最初は“検索+(必要に応じて)ディスプレイ/ファインドのリマケ”で80点 を取りにいく。ショッピングやYouTube本格運用は次段。
- キャンペーンはむやみに分けない。 例外(後述)を除き、まずは集約で学習&管理コストを抑える。
- “設定の善し悪し”がCPAを左右する。 ロケーション/オーディエンス/入札/キーワード/除外の基本だけで成果が変わる。
2. 検索(リスティング)広告の初期設定:最短ルート
① キャンペーンタイプ / 配信面
- 「検索」を選択。
- “ディスプレイネットワークに拡張”は必ずオフ。(ディスプレイは別キャンペーンで)
③ 地域設定(最重要)
- 例:校舎10km圏など、ビジネスに即した範囲に。
- 詳細設定の既定「関心を示すユーザーを含む」は要注意。
- 来店/サービス提供が“実際の所在”に依存するなら 「所在地にいるユーザーのみ」 を選ぶ。
④ オーディエンス
- “観察(オブザベーション)”のまま。
ターゲティングに切り替えると配信が狭まり機会損失に。
⑤ 1日予算・入札
- 初動は
- 個別クリック単価(手動) で細かく見る、または
- クリック数の最大化 + 上限CPC を設定して暴発防止。
- 目安式:Max CPC ≒ CVR × 目標CPA
- 例)CVR3%、目標CPA ¥10,000 → 0.03×10,000= ¥300
⑥ 広告グループの切り方
- 検索意図/商材単位で分ける。(例:プログラミングコース/Webデザインコース)
- 1グループに“なんでも”詰め込まない。
3. キーワード設計:無駄配信を止め、当てにいく
① マッチタイプ初期方針
- フレーズ/完全一致から開始し、広げる順。
- 部分一致は実力(除外管理/分析)とCV蓄積が整ってから。
② ネガティブ(除外)で守る
- 配信キーワードのマッチタイプと除外の挙動は別物。
- フレーズ一致の除外は語順逆に効かない。必要に応じ 部分一致除外で広く止める。
- 初動は“意図から遠い語”だけを除外(例:無料/激安/求人/中古 など、案件に応じて)。
③ 便利な出し方
- URLから候補抽出は“ハズレも混じる”ので目視で削る。
- ラッコキーワード等で“人が実際に調べている切り口”を確認。
4. 広告文(RSA)の作り方:CVR視点の検証ループ
原則
- ふわっと訴求(「楽しく学べる」など)ではなく、“目的/結果”に直結する利点を。
- LPとメッセージを一致させる(オファー/CTA/根拠)。
- “場所/動的挿入”は案件適合時のみテスト。
検証のコツ(実務ワザ)
- 1広告グループにRSAを2–3本入れ、説明文は共通・見出しだけ差分でABする。
- ピン留めで“順序”も固定 → どの見出しがCVRに効いたかを特定しやすい。
- クリック率が高くてもCVRが低い見出しはNG(CPA悪化の温床)。
見出しテンプレ(例:資格スクール)
- 「最短◯週間で未経験から実務へ」
- 「就職内定率◯%の理由を公開」
- 「まずは《無料カリキュラム配布》」
- 「夜間/土日OK|渋谷駅徒歩3分」
- 「資料請求で体験授業招待」…など
5. 広告表示オプション:積み上げで差が出る箇所
- サイトリンク:4本以上、別URL(アンカーで擬似分岐も可)
- コールアウト:特典/メリット(例:分割OK・駐車場有・土日開講)
- 構造化スニペット:サービスの“属性”(例:映像授業/就職支援/マンツーマン)
- 電話、プロモーション、住所(実店舗は要検証)、画像(クリック質に注意)
6. 指名(ブランド)キャンペーンは分けるべき理由
- タイトル&リンク先を自由最適化(季節訴求や直リンク差し替え)
- 競合が被せてきた時の受け皿(機会損失防止)
- 安いCPCでCVを“確実に拾う”
- オークション状況が見える
- 入札は目標インプレッションシェア(最上位)から検証。
- ただし一般名詞に近い屋号はコスト高/非効率の恐れ → テスト判断。
7. リマーケティング(ディスプレイ/ファインド):配信設計とクリエイティブ
① リストは“期間で細かく分割”
- 1日/2–3日/4–7日/8–14日… と階層化。
- コンバージョン済は除外。
- 最適化ターゲティングは初動オフ、拡張したい局面でオン検証。
② クリエイティブの考え方
- 画像→テキストの順で認知される前提。
- リスティングで刺さらなかった理由を想定し、深掘りLPへ。
- 例:「就職内定率が高い理由」「卒業生の進路・作品集」
- 画像とテキストで同じことを書かない(役割分担)。
- 画像のみ表示ケースにも耐える“画像だけで伝わる”構成に。
③ DSA(動的検索広告)
- 求人/ECなど語が膨大な案件で効くケース多数。
- CPCが一般KWより安い傾向。LPの情報構造は整える。
8. 初動運用チェック3点 & 蓄積後の改善3本柱
初動3点(毎日これだけ見る)
- 日中で予算が枯れていないか
- 偏在するKWのCPCを調整。
- 検索語句の適正
- 見当違いは除外。ただし“可能性語”は早計に切らない。
- オークション分析
- 上部掲載率/重なりで入札or質の課題あぶり出し。
一定量データ後の改善3本柱
- 入札戦略切替:CV 15件前後を目安に目標CPAへ切替→比較検証。
- 広告文の継続AB:CVRに効く見出しを発見→量産。CTRだけで判断しない。
- KW精査:
- 成果検索語句を“完全一致”で昇格
- 系列語も展開
- 逆に“負のシグナル語”(例:格安/無料 など案件次第)は除外で血止め。
ディスプレイ/ファインドの運用ポイント
- 入札:手動で検証→自動(目標CPA)に移行の順も有効。
- ターゲット毎の広告セットで“何が効いたか”因数分解。
- プレースメント(表示場所)の勝ち筋を発見→専用グループ化。
- アプリ面は案件依存(思い込みで全除外しない。データで判断)。
9. コンバージョン計測(GTM):電話・フォーム・サンクス
前準備
- LPにGoogle Tag Managerを設置(コンバージョンリンカーも忘れずに)。
代表的な計測
- 電話タップ:
tel:
リンクのクリックをトリガー。 - フォーム送信:サンクスURL到達をトリガー(サンクスなしは別条件で実装)。
- 値の扱い:初動は同一価値でもOK。重要KPIに重みづけしたいなら相対価値を設定。
- カウント:基本「初回のみ」。
- アトリビューション:減衰/線形などで整合的に。
10. LP/サイト改善:導入必須ツールと見方
- Microsoft Clarity(無料) を導入(ヒートマップ/セッションリプレイ)。
- 見るポイント:
- 直帰/離脱が集中する要素(読まれていない折り返し、弱いCTA)
- モバイルの可読性/速度
- 情報順序:ベネフィット→根拠→事例→CTA の“山”が作れているか
11. チェックリスト
- 検索キャンペーンでディスプレイ拡張をOFFにした
- 地域詳細で「所在地のユーザーのみ」にしている(来店/エリア商材)
- オーディエンスは観察運用から開始
- ブランド(指名)は別キャンペーンで運用
- ネガティブの挙動(語順/マッチ差)を理解している
- RSAは見出し差分×複数本でCVR中心に評価
- 成果検索語句→完全一致に昇格している
- リマーケは期間分割&CV済除外
- GTMで電話/フォームを正しく計測
- サイトリンク/コールアウト/構造化を埋めた
まとめ:まず“正しい初期設定”、次に“検証の型”
- 設定の数%の差が、費用の数十%の差になるのがGoogle広告。
- 初期は守り(配信を狭める/計測を正す)、蓄積後は攻め(入札自動化、見出し発見、KW昇格)。
- “なぜそのテストをするのか?”を常に言語化し、CVRに効く要因を一つずつ特定していけば、ムダなくCPAを下げ続けられます。